工場のチェーンブロック設置・点検|手動・電動チェーンブロックの保守
チェーンブロックとは、チェーン(鎖)を使って荷物を吊り上げるための、コンパクトな巻上げ器具のことです。手でチェーンを引いて荷を上げ下げする手動式と、モーターの力で巻き上げる電動式があります。
天井クレーンを動かすほどではないが、人力では持ち上がらない重さの物を扱う場面で、工場のあらゆる部分で使われています。
小さく単純な道具に見えますが、法令上の扱いは手動と電動で大きく異なり、内部の部品にも明確な交換・廃棄の基準が定められています。
本記事では、手動式・電動式それぞれの特徴、法令上の位置づけ、点検・修理の実務までを整理します。
目 次
新規設置から法令上の届出、定期点検、チェーン・ブレーキの整備、オーバーホールまで、内容を問わずご相談いただけます。当てはまるものがあれば、まずは無料診断からご案内します。
01設置・新規導入
- 機械周辺にチェーンブロックを設置したい
- ジブクレーンに電気チェーンブロックを追加したい
- 天井走行レールへトロリ式で取り付けたい
- 金型交換用の専用チェーンブロックを設置したい
02法令対応・届出
- 電気チェーンブロックの設置報告書を作成してほしい
- 3t以上の落成検査に対応してほしい
- 複数の電動チェーンブロックの法令区分を確認してほしい
03定期点検・自主検査
- 月次・年次の定期自主検査をお願いしたい
- 複数台をまとめて点検してほしい
- 点検記録を整備してほしい
04玉掛用具としての点検
- 手動チェーンブロックの使用前点検を整備したい
- 玉掛用具全般の状態を確認してほしい
05チェーン・フックの交換
- ロードチェーンの伸び・摩耗で交換したい
- フックの口開きで交換したい
- フックの磁粉探傷検査をお願いしたい
06ブレーキ整備
- ブレーキが効かない、自然降下する
- ブレーキシューを交換したい
- 電磁ブレーキを整備したい
07モーター・減速機・制御系
- 電気チェーンブロックのモーターを修理したい
- 減速機の油漏れを直したい、巻上速度が落ちた
- ペンダント不調、無線リモコン化・インバータ化したい
08安全装置の追加
- 過巻防止装置を追加したい
- 過負荷防止装置を追加したい
- 自動停止装置を追加したい
09オーバーホール・特殊環境
- 設置から長年経つので総合整備したい
- 複数台を計画的にオーバーホールしたい
- 防爆・食品ステンレス・クリーン・屋外防錆仕様が必要
10緊急対応・関連設備
- チェーンブロックが動かない、急ぎで対応してほしい
- ブレーキが効かず危険な状態
- ジブ・天井クレーンの整備や電気工事と一体で進めたい
チェーンブロックの対応修理や工事
弊社では、手動・電動チェーンブロックに関するあらゆる設置や保守に対応しております。
用途にあわせた選定から、設置工事まで対応
走行レールの敷設や電源配線もあわせて施工
定期自主検査と、必要な届出・記録の整備を代行
摩耗・変形したロードチェーンやフックを交換
荷下がりや効き不良に、ブレーキの調整・部品交換
電動チェーンブロックの動力部や制御系の不具合に対応
分解洗浄と消耗部品交換で、性能と安全性を回復
過巻防止や過負荷防止など、安全装置の後付けに対応
防爆仕様やインバータ・無線リモコン仕様にも対応
費用の目安
チェーンブロックの設置・点検費用は、種類、容量、内容によって変動します。以下はあくまで目安であり、正確な金額は現地調査のうえでのお見積りをご確認ください。
手動チェーンブロック本体価格(参考)
| 定格荷重 | 費用目安 |
|---|---|
| 250kg | 数千円〜数万円/台 |
| 500kg | 数千円〜数万円/台 |
| 1t | 1〜数万円/台 |
| 2t | 数万円/台 |
| 3〜5t | 数万円〜十数万円/台 |
| 10t | 十数万円〜数十万円/台 |
| 防爆仕様 | 標準の数倍 |
電気チェーンブロック本体価格(参考)
| 定格荷重 | 費用目安 |
|---|---|
| 250〜500kg | 十数万円〜数十万円/台 |
| 1〜2t | 数十万円〜/台 |
| 3〜5t | 数十万円〜百万円程度/台 |
| 10t以上 | 百万円〜数百万円/台 |
| インバータ仕様 | 標準の1.3〜1.5倍 |
| 無線リモコン仕様 | 別途数万円〜十数万円 |
設置工事費
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 手動チェーンブロック取付 | 数千円〜数万円/か所 |
| 電気チェーンブロック取付 | 数万円〜十数万円/台 |
| 走行レール敷設 | 数十万円〜/m |
| 電気配線工事 | 別途 |
| 強度確認・補強工事 | 別途 |
定期自主検査
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 月次定期自主検査(1台あたり) | 数万円〜/回 |
| 年次定期自主検査(荷重試験含む) | 数万円〜十数万円/回 |
| 複数台のまとめ点検 | 個別見積り |
| 玉掛用具の使用前点検整備 | 数万円〜 |
部品交換・修理
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| ロードチェーン交換 | 数万円〜十数万円/台 |
| フック交換 | 数万円〜/台 |
| ブレーキ整備 | 数万円〜十数万円/台 |
| 電磁ブレーキ交換 | 十数万円〜数十万円/台 |
| ペンダント交換 | 数万円〜十数万円/個 |
| リモコン化追加 | 数十万円〜/台 |
| モーター交換 | 十数万円〜/台 |
| 減速機オーバーホール | 数十万円〜/台 |
オーバーホール
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 手動チェーンブロックのオーバーホール | 数万円〜十数万円/台 |
| 電気チェーンブロックのオーバーホール | 十数万円〜数十万円/台 |
| 大型・高容量機のオーバーホール | 数十万円〜百万円程度/台 |
高所作業(足場、高所作業車)、既存撤去・廃材処分、試験荷重の手配、緊急対応費などが別途発生する場合があります。
チェーンブロック設置・整備の流れ
設置・点検・修理・オーバーホールのいずれの場合も、おおよそ次のような流れで進みます。
各項目の詳細は以下の通りです。
1. 現地調査・診断
- 用途、つり上げ荷重、揚程、使用頻度、手動式か電動式かの確認
- 取付方法(梁・天井固定、ジブクレーン、走行レール、移動式)の確認
- 取付部の構造強度、アンカーの耐力、周辺の障害物や電源の確認
- 既存機の場合はロードチェーン・フック・ブレーキの状態確認
2. 提案・お見積り
- 新規設置、定期点検、部品交換による修理、オーバーホールのそれぞれについて、効果と費用、停止時間を比較したうえでご提案します
3. 法令区分の確認
- つり上げ荷重とトロリの有無から適用区分を判定し、設置報告書や落成検査、定期自主検査の要否を整理します
4. 各種準備
- 本体・ロードチェーン・フック・ブレーキ部品・取付金具の手配、廃番機の場合は代替品の選定、工事計画書の作成を行います
5. 施工計画
- 作業や生産への影響を最小化する日程の検討、高所作業の安全対策、複数台の場合の順次施工を計画します
6. 工事・整備実施
- 取付金具・アンカーの施工と本体の取付、電気配線と制御機器の接続、点検・部品交換・分解整備、必要に応じた安全装置の追加を行います
7. 試験・荷重確認
- 巻上・巻下・走行の動作確認、ブレーキの保持力確認、過巻防止など安全装置の動作確認、必要に応じた荷重試験を行います
8. 記録・引き渡し
- 点検記録・施工写真のお渡し、取扱いと日常点検のご説明、次回点検時期と保全計画のご提案を行います
よくあるご質問
Q. 手動チェーンブロックは法定点検が必要ですか?
手動チェーンブロックは「クレーン」に該当しないため、法定点検義務はありません。ただし、安全管理の観点から自主点検は強く推奨されます。玉掛用具として使う場合は使用前点検が必要です。
Q. 電気チェーンブロックは設置届が必要ですか?
トロリと組み合わせて0.5t以上の電気チェーンブロックは、クレーン等安全規則の適用を受けます。0.5t以上3t未満は設置報告書、3t以上は設置届+落成検査が必要です。
Q. ロードチェーンの交換時期はいつですか?
伸び5%超、摩耗(直径の10%超)、亀裂・変形があれば即時交換が法令で定められています。日常点検で状態を継続把握することが重要です。
Q. 自然降下するようになりました。
ブレーキの劣化が最も多い原因のひとつです。ブレーキシュー交換、電磁ブレーキ整備、メカニズムの分解整備で対応します。
Q. メーカーが部品供給を打ち切りました。
汎用部品での修理、互換品の調達、必要に応じた新品交換などで対応します。
Q. 業務を止めずに点検できますか?
短時間で完了する点検は業務継続中に対応可能です。荷重試験など停止が必要な作業は調整します。
Q. 工場内の全チェーンブロックをまとめて点検できますか?
はい。敷地内全台の状態診断、年間点検計画、メンテナンス契約まで対応します。
Q. 設置から30年経つチェーンブロック、まだ使えますか?
オーバーホールで延命可能なケースが多くあります。現状調査のうえ、オーバーホールと新品交換の両方で判断材料を提供します。
Q. 緊急対応はしてもらえますか?
はい。チェーンブロックの故障、ブレーキ不良など、東海3県エリア内で可能な限り迅速に対応します。
基礎知識
ここから下は、この工事に関する基礎知識をまとめたコンテンツです。検討中の方が知っておきたい判断材料を解説します。
「最も身近な吊り具」、見過ごされがちな安全要素
チェーンブロックは、機械の据付・整備、金型交換、製品の積み下ろし、設備のメンテナンス、小規模な重量物搬送など、こうした場面で用いられます。天井クレーンを動かすほどでもないが、人力では持てない重さの物を扱う時、チェーンブロックは欠かせません。
手動式は500kg〜数tの範囲で幅広く使われ、電気チェーンブロック(電動)は中規模工場の主役クレーンとしても広く活躍しています。
しかし、チェーンブロックは「最も身近で、最も見過ごされやすい吊り具」でもあります。「ぶら下げてあるだけ」「使う人が決まっていない」「保管庫の隅で錆びている」といった状態のチェーンブロックが、いざ使う時にチェーン切断、フック破損、ブレーキ不良による落下事故を引き起こすこともあります。
加えて、法令対応の認識にも混乱が見られます。
よくある認識のポイント
- 手動チェーンブロックは法定点検不要
- 電気チェーンブロックは設置届が必要
- 玉掛用具としてなら使用前点検義務
こうした規制のグラデーションを正確に理解し、自社の運用に合わせた管理体制を整えることが、安全管理と法令対応の両立に欠かせません。
そして、チェーンブロックは消耗品でもあります。チェーン、フック、ブレーキ、ロードシーブ、ベアリングなど各部品には寿命があり、適切な点検と部品交換、廃棄基準の遵守が、安全な吊り作業の前提となります。
チェーンブロックの基本|手動式と電動式の違い
チェーンブロックは、構造的に手動式と電動式(電気チェーンブロック)の2系統に大別されます。
手動式チェーンブロック
ハンドチェーン(手鎖)を引っ張って荷を巻き上げる人力式です。
主な特徴
- 電源が不要でどこでも使える
- 比較的安価
- 構造がシンプルでメンテナンスも容易
- 持ち運びができる軽さ
- 防爆・防水仕様も豊富
一方、動作速度は遅く、連続作業には向いていません。
主な用途
- 機械整備、設備メンテナンス
- 金型交換、据付作業
- 緊急時・停電時の備え
- 防爆区画・屋外
- 小規模搬送
定格荷重は250kg、500kg、1t、2t、3t、5t、10tが標準的で、メーカーによってはさらに小型・大型のバリエーションもあります。
電気チェーンブロック(電動式)
電動モーターで荷を巻き上げる動力式です。
ホイスト式クレーンの巻上装置には、ワイヤーロープを使う「電気ホイスト(ワイヤ式)」とチェーンを使う「電気チェーンブロック」の2系統があり、電気チェーンブロックはそのうちのチェーン式にあたります。
本体がコンパクトで天井が低い現場にも設置しやすく、比較的小容量帯を得意とするため、天井クレーンだけでなく後述するジブクレーンなどとも組み合わせて使われています。
動作が速く連続作業に強いという点が特徴で、標準・インバータ・二速など様々な制御方式があり、リモコン操作も可能です。重量があるため固定設置または専用トロリで使用します。
ただ、価格は手動式より高くなり、電源も必要となります。
主な用途
- 工場・倉庫の主力吊り上げ機
- 連続的な搬送作業
- 生産ライン
- 重量物の頻繁な吊り上げ
定格荷重は100kg、250kg、500kg、1t、2t、3t、5t、10t、20t以上まで幅広く対応しています。
| 項目 | 手動式 | 電気式 |
|---|---|---|
| 電源 | 不要 | 必要 |
| 速度 | 遅い | 速い |
| 連続作業 | 不向き | 向いている |
| 価格 | 安い | 高い |
| 持ち運び | しやすい | しにくい |
| 構造 | シンプル | やや複雑 |
| メンテナンス | 容易 | 専門知識が必要 |
| 防爆対応 | 比較的容易 | 専用機が必要 |
チェーンブロックの主な構造
チェーンブロックの主要部品を整理しておきましょう。
共通部品
- ロードチェーン(荷鎖)
- フック(上フック・下フック)
- 本体ケーシング
- ロードシーブ(巻上ホイール)
- ブレーキ装置
ロードチェーン(荷鎖)
荷を吊り上げる主要チェーンで、耐荷重の中核部品にあたります。ロードシーブの溝に噛み合うよう、リンクの形状・寸法が精密に規格化されており、一般的な用途の鎖とは異なる専用品です。
最重要保全対象のひとつで、伸び・摩耗・亀裂の有無を定期的に確認する必要があります。
フック
天井・梁に固定される取付フックである「上フック」と、荷を引っ掛ける「下フック」の2つで構成されます。
下フックには、作業中に荷が外れないようにする「外れ止め(ラッチ)」が付いており、この開閉が渋い・破損しているといった不具合は、玉掛け作業時の落下事故に直結するため見過ごせません。
本体ケーシング
内部機構を保護する外殻です。
粉じんや水分の侵入を防ぐ役割もあるため、屋外・防塵環境で使う場合はケーシングの気密性も選定のポイントになります。
ロードシーブ(巻上ホイール)
チェーンを巻き上げる主要部品です。
表面にはロードチェーンのリンク形状に合わせた溝が刻まれており、この溝が摩耗するとチェーンが正しく噛み合わず、滑りや異音の原因になります。
ブレーキ装置
荷を保持する制動装置で、最重要安全部品にあたります。
モーターやハンドチェーンの操作を止めた瞬間から、重力に逆らって荷をその位置に保持し続けるという役割を担うため、他の部品以上に劣化が事故に直結しやすい部品です。
手動式特有の部品
- ハンドチェーン(手鎖):作業者が引っ張る操作用チェーン
- 減速ギア:人力を増幅する歯車機構。歯数の比率によって、少ない力で重い荷物を持ち上げられる仕組み
- ラチェット機構:逆転防止機構。作業者がハンドチェーンから手を離しても、荷の重みで巻き戻されないようにする
電動式特有の部品
- 電動モーター:巻上動力源
- 減速機:モーター回転を減速する
- 電磁ブレーキ:電気的に制御されるブレーキ
- ペンダント操作器・リモコン:作業者が操作する装置
- 過巻防止装置:チェーンの巻きすぎを防ぐ
- 過負荷防止装置(必要時):定格荷重超過を防ぐ
電磁ブレーキは、停電時には自動的に制動がかかる(無励磁作動形)構造のものが一般的で、これにより電源が失われても荷が落下しない設計になっています。
過巻防止装置は、フックが上限位置まで達すると自動的に停止させる仕組みで、これが故障するとチェーンが本体内部に巻き込まれ続け、破損や落下事故につながります。
補機・周辺設備
トロリ(横行装置)
チェーンブロックを横行レール上で移動させる装置です。
- 手押しトロリ:人力で移動する
- 手動ギヤトロリ:ハンドチェーンで横行操作する
- 電動トロリ:モーター駆動
前述の通り、電気チェーンブロックがこのトロリと組み合わされて使われているかどうかは、法令上「クレーン」に該当するかを左右する重要な要素です。
走行レール
I型鋼レール・専用レール・カーブレールなどがあります。
法令対応|「クレーン」に該当するかどうかで規制が変わる
チェーンブロックの法令対応は、「クレーン」に該当するかどうかで大きく分かれます。
「クレーン」の定義
労働安全衛生法・クレーン等安全規則第1条では、クレーンを「動力を用いて荷を吊り上げ、これを水平に運搬することを目的とする機械装置」と定義しています。
この定義に基づき、人力で巻き上げる手動チェーンブロックは「クレーン」に該当しません。一方、動力(モーター)で巻き上げる電気チェーンブロックは、条件次第で「クレーン」に該当します。
電気チェーンブロックがクレーンに該当する条件
- トロリの種類が手動・電動を問わず、トロリと結合して使用していること
- 吊り上げ荷重が0.5t以上であること
これら2つの条件が揃う場合は、クレーン等安全規則の適用を受けます。
逆に言えば、電気チェーンブロックであっても、トロリを使わず固定した状態で使用し、荷を昇降させるための搬器やそれをガイドする仕組みがない場合は、荷重に関わらずクレーンには該当しません。
つり上げ荷重別の手続き
まず前提として、トロリを使わず固定して使用する電気チェーンブロックは、荷重に関わらずクレーンに該当しません。前述の通り、水平に運搬する機構がないからです。
トロリを使用する電気チェーンブロックについては、つり上げ荷重に応じて次のように手続きが分かれます。
つり上げ荷重0.5t未満
クレーンに該当せず法的な届出義務はありませんが、自主点検が推奨されます。
つり上げ荷重0.5t以上3t未満
- 設置報告書の提出(労働基準監督署)
- 定期自主検査(月次・年次)
- 運転者・玉掛者の資格
つり上げ荷重3t以上
- 設置届の提出と落成検査の受検
- 検査証の交付
- 性能検査(2年ごと)
- 定期自主検査
- 運転者・玉掛者の資格
手動チェーンブロックの扱い
手動チェーンブロックはクレーンに該当しないため、法定点検義務はありません。
ただし、クレーンで吊り上げる荷物をチェーンブロックを介して吊る(玉掛用具として使う)場合は、クレーン等安全規則で使用前点検が義務となります。また、法令上の義務はなくとも、安全管理の観点から自主点検が強く推奨されます。
事故発生時の事業者責任の観点でも、点検記録の整備は重要です。
運転者・玉掛者の資格
- 運転者(つり上げ荷重5t以上):クレーン運転士免許
- 運転者(つり上げ荷重0.5t以上5t未満):クレーン運転の特別教育
- 玉掛者(つり上げ荷重1t以上):玉掛け技能講習
- 玉掛者(1t未満):玉掛け特別教育
これらは、電気チェーンブロックがクレーンに該当する場合に必要となります。
主な不具合・劣化症状
チェーンブロックの劣化サインを早期に発見することが、突発故障と事故の防止に直結します。
ロードチェーンの劣化(最重要)
主な劣化サイン
- 伸び
- 摩耗
- 割れ・亀裂
- 腐食・サビ
- 曲がり・ねじれ
- キンク(折れ曲がり)
クレーン等安全規則では、次のいずれかに該当するつりチェーンの使用を禁止しています。
- 伸びが製造時の長さの5%を超えるもの
- リンク断面の直径の減少が製造時の直径の10%を超えるもの
- 亀裂・変形があるもの
ロードチェーンは消耗品であり、定期的な確認と適切な交換が必須です。
フックの劣化
- 口の開き
- 吊り部の摩耗
- 割れ・亀裂
- 変形
- 回転部の動作不良
- 外れ止め(ラッチ)の不良
クレーン等安全規則では、フックについて「変形」または「き裂」があるものの使用を禁止していますが、条文自体には具体的な数値基準は定められていません。
実務上は、業界団体の点検基準に基づき、寸法を計測して元の寸法より5%以上摩耗・変形しているものを廃棄するという目安が広く使われています。
ブレーキの劣化
最も安全に直結する部位です。
- 保持力の低下(自然降下)
- 異音・引きずり
- シューの摩耗(電気式の電磁ブレーキ)
- 動作不良
ロードシーブ・本体機構の劣化
- ロードシーブ歯部の摩耗
- ベアリングの劣化
- ギア部の摩耗
- 内部部品の腐食
電動式特有の劣化
- モーターの劣化
- 減速機の摩耗・油漏れ
- 電磁ブレーキの劣化
- 配線の劣化
- ペンダント・リモコンの不良
- 制御部の故障
環境による劣化
- 屋外・薬品環境・塩害による腐食
- 機構部の動作不良につながる粉塵堆積
- 油汚れ
これらの劣化のうち、ロードチェーン・フック・ブレーキの3つは、法令上または業界基準上の明確な廃棄基準が定められている部品であり、日常点検で最優先で確認すべき箇所です。
一方、モーターや減速機、環境要因による劣化は、直接の廃棄基準こそないものの、放置すると前述の3部品の劣化を早める背景要因になり得るため、あわせて確認することが望ましいといえます。
使用前点検|玉掛用具としての点検義務
クレーンで吊り上げる荷物をチェーンブロック・スリング・ベルト等を介して吊る場合、これらは玉掛用具として扱われ、使用前点検が法令上の義務となります。
使用前点検の項目
- フックの口の開き、摩耗、亀裂
- チェーンの伸び、摩耗、亀裂
- 本体の損傷、変形
- ブレーキの作動
- ラッチ(外れ止め)の動作
- 異常な錆、腐食
点検記録については、法令上の義務範囲ではないものの、記録を残すことが事業者責任の観点で重要です。万が一の事故発生時、適切な点検を実施していたことの証跡となります。
月次・年次の定期自主検査(電気チェーンブロックの場合)
電気チェーンブロックでトロリと組み合わせて0.5t以上の場合、クレーン等安全規則上の定期自主検査が義務付けられます。
月次定期自主検査(月1回以上)
- 安全装置・警報装置・ブレーキ・クラッチの異常の有無
- ロードチェーン・ワイヤロープの損傷の有無
- フック・つり具の損傷の有無
- 配線・配電盤・集電装置・開閉器・コントローラの異常の有無
年次定期自主検査(年1回以上)
上記月次項目すべてに加え、次の項目を実施します。
- 構造部分・機械部分・電気部分の詳細点検
- 基礎の異常の有無
- 定格荷重による荷重試験
検査記録は3年間の保管が義務付けられています。
チェーンブロックの設置・取付工事
新規チェーンブロックの設置や、既存設備への追加には、適切な工事が必要です。
1. 固定取付(梁・天井固定)
工場の梁・天井ビームに直接、アンカーボルトや専用金具で取り付けます。強度確認が重要な工程です。
2. ジブクレーンへの取付
ジブクレーンのアーム先端に取り付け、ジブクレーン本体と一体で運用します。
3. 走行レールへの取付(トロリ式)
I型鋼レールへトロリを取り付け、単独使用または天井クレーンの巻上機として使用します。横行レールの設置・整備もあわせて行います。
4. 移動式(ポータブル)
持ち運びが可能で、必要な場所でフックを掛けて使用します。緊急用・メンテナンス用に向いています。
取付時の重要確認事項
- 取付部の強度
- 旋回・回転の確保
- 安全距離の確保
- 電気工事(電動式の場合)
- 法令対応
1. 取付部の強度
梁・天井の構造強度、アンカーの十分な耐荷重、フックを掛ける部材を確認します。取付部の強度不足は、チェーンブロック本体の性能に関わらず落下事故に直結するため、最も優先して確認すべき項目です。
2. 旋回・回転の確保
荷物の回転に追随できるフック構造、ねじれ防止を確認します。
3. 安全距離の確保
作業者の動線、周辺機器・配管との接触防止、落下範囲の安全確保を確認します。
4. 電気工事(電動式の場合)
電源の引込み、制御盤の設置、ペンダント配線が必要です。
5. 法令対応
つり上げ荷重に応じた設置報告書・設置届の確認、3t以上の場合の落成検査受検が必要です。
チェーンブロックの修理・メンテナンス
チェーンブロックは消耗部品の交換と整備で長寿命化が可能です。
ロードチェーンの交換
廃棄基準到達時にメーカー指定品を使用し、端末加工・フック接続まで行います。他部品と汎用品を組み合わせることはできず、必ずメーカー指定品を使う必要があります。
フックの交換
上フック・下フックともに廃棄基準到達時に交換し、外れ止め(ラッチ)もあわせて修理・交換します。ラッチのみが破損している場合は、フック本体を交換せずラッチ単体の交換で済むこともあります。
ブレーキの整備
ブレーキシュー交換、電磁ブレーキの調整・交換、摩擦面の点検を行います。自然降下の症状が見られる場合は、多くがこのブレーキの摩耗・劣化に起因するため、優先的に点検すべき箇所です。
モーター修理・交換(電動式)
絶縁抵抗の低下、ベアリングの摩耗、巻線の焼損といった劣化に対し、巻線の巻き直し(リワインド)やベアリング交換で対応します。
焼損が重度な場合や旧式で非効率な場合は新品交換を検討しますが、2015年以降の三相誘導モーターはトップランナー制度により高効率規格「IE3」以上のものしか製造されていないため、始動電流の増加やサイズ変更に注意が必要です。
減速機の整備(電動式)
モーターの高速回転を巻上げに適した低速・高トルクに変換する部品です。ギアの摩耗、ベアリングの劣化、オイルシールの劣化による油漏れが生じます。
異音や油の滲みの段階で分解点検すれば部分補修で済みますが、放置してギアの歯欠けなど重度損傷に至ると、減速機一式の交換が必要になります。
ロードシーブの交換
摩耗時に専用部品で交換します。ロードチェーンとの噛み合わせが悪くなると、チェーンの偏摩耗を早める原因にもなります。
ベアリング交換
機構部のベアリングを全数交換し、異音・振動を改善します。
制御系の修理(電動式)
ペンダント交換、リモコン更新、制御盤更新を行います。操作系の不具合は誤操作にもつながるため、早めの対応が望ましい箇所です。
外装・表面処理
防錆塗装、識別表示の更新を行います。屋外・薬品環境では、内部部品より先に外装の劣化が進むこともあります。
オーバーホール
設置から長期使用したチェーンブロックには、本格的なオーバーホールで寿命延長が可能です。
オーバーホールの流れ
- 分解・洗浄
- 各部品の摩耗測定・検査
- 消耗部品の全数交換
- 組立・調整
- 性能試験
小型の手動式は本体価格自体が手頃なため新品交換が有利になりやすく、中〜大型の手動式や電気チェーンブロックは本体価格が上がる分、修理・整備で延命する方が経済的になりやすい傾向があります。
これはポンプやモーターなど、他の機械設備の判断基準とも共通する考え方です。
ご相談内容ごとの考え方
設置・法令対応のご相談
設置場所の強度確認が最初のステップになるため、既存の梁・天井・床の状態を含めた現地調査から始めることをおすすめします。
トロリの有無や荷重によって適用される規制が変わるため、まず自社の設備がどの区分に該当するかを正確に把握することが大切です。
点検のご相談
複数台をまとめて点検契約にすることで、点検周期の管理や記録の一元化がしやすくなります。
法定点検義務のない手動チェーンブロックでも、玉掛用具として使う場合は使用前点検が必要になるため、用途の確認が重要です。
部品交換・整備のご相談
ロードチェーンやフックは廃棄基準が明確に定められている部品のため、基準に該当するかどうかの正確な判定が求められます。
自然降下は重大事故に直結しやすい症状のため、他の不具合より優先度を上げて対応すべきご相談です。電動式ではモーター・減速機のどちらが原因かを切り分ける現地診断が最初のステップになります。操作系のトラブルは誤操作や急停止の原因にもなるため、早期の修理・更新をおすすめします。
安全装置・オーバーホールのご相談
過巻防止装置などは既存機への後付けが可能なケースが多く、法定義務ではない設備でも、事故予防の観点から追加を検討する価値があります。
部品単位での修理を繰り返すよりも、まとめて整備した方がコスト・工期の両面で効率的になる場合があります。関連設備とまとめて整備することでも、工程・費用の両面で効率的になることが多くなります。
チェーンブロックは、工場で最も身近な揚重設備です。手軽に使える分だけ台数も多く、どこに何台あるか把握しきれていない、点検の記録が残っていない、という現場も少なくありません。しかし吊り荷を支えている以上、ロードチェーンの伸びやフックの口開き、ブレーキの効きの低下は、そのまま落下事故のリスクになります。
チェーンブロックは、つり上げ荷重とトロリの有無によって適用される法令区分が変わります。電動式で法定点検の対象になるもの、手動式でも玉掛用具として使用前点検が必要になるものなど、まず自社の設備がどの区分に該当するかを正しく把握することが、管理の出発点です。
「機械周辺にチェーンブロックを設置したい」「ロードチェーンの交換時期を知りたい」「自然降下するようになった」「工場内の全台をまとめて点検してほしい」など、どんな段階のご相談でも承っております。
愛知・三重・岐阜の工場で、チェーンブロックのことでお困りごとがありましたら、ぜひお問い合わせください。現地調査とお見積りは無料です。取付部の強度確認を含む設置工事、設置報告書や落成検査などの法令対応、月次・年次の定期自主検査と記録整備、ロードチェーン・フック・ブレーキの交換、フックの磁粉探傷検査、モーター・減速機の修理、無線リモコン化、過巻防止などの安全装置追加、防爆・食品・クリーン仕様への対応まで、専門知識と現場経験を持つスタッフが、御社の現場の安全を支える最適なご提案をいたします。