工場の窒素ガス発生装置|PSA式・膜分離式の導入・保守・更新
工場で使う窒素ガスは、これまでボンベや液体窒素タンクで購入するのが一般的な方法でした。しかし近年では、コンプレッサーの圧縮空気から窒素を分離して自社で作る「窒素ガス精製装置」を導入する工場が増えています。
空気のおよそ8割は窒素が占めているため、適切な装置があれば工場内の空気を原料に窒素を作り出すことができます。ガスコストの削減だけでなく、供給の安定化やBCP(事業継続計画)の観点からも注目される設備です。
本記事では、どのような場面で導入が検討され、どんな点に注意すべきかを整理してお伝えします。
目 次
自家製造への切替えから新規導入、既存装置の更新・保守まで、内容を問わずご相談いただけます。当てはまるものがあれば、まずは無料診断からご案内します。
01自家製造への切替え
- ボンベから自家製造に切り替えたい
- 液体窒素タンクのリース料が高い、自家製造を検討している
- コストメリットを試算してほしい
02用途別の検討
- 樹脂成形機の酸化防止用に窒素を導入したい
- ファイバーレーザー切断のアシストガスとして自家製造したい
- 食品包装の窒素ガス置換に自家製造を検討している
- 熱処理炉のパージガスを供給したい
03新規導入
- 新ラインで窒素ガス供給設備を新設したい
- 既存の窒素配管を活用した自家製造装置を追加したい
04既存装置の更新・改修
- 設置から長年経つので装置を更新したい
- 純度が落ちてきた、改修が必要
- 容量を増やしたい
05純度・容量変更
- より高純度の装置が必要
- 生産量増加で容量を増設したい
06コスト削減
- ガスコストの削減提案がほしい
- 補助金を活用して導入したい
07BCP対応
- 災害時の窒素供給確保のため自家製造を導入したい
- サプライチェーン対応で安定供給を確保したい
08定期保守・メンテナンス
- フィルター・吸着剤を交換したい
- 定期メンテナンス契約を結びたい
- 純度異常の原因を調査してほしい
09関連工事との連動
- コンプレッサー更新と同時に窒素装置も導入したい
- エア配管・窒素配管を総合的に整備したい
- 特殊ガス供給設備全体を見直したい
10緊急対応
- 窒素装置が止まった、緊急対応してほしい
- 純度が急低下、製品品質に影響が出ている
窒素ガス精製装置の対応修理や工事
弊社では、窒素ガス精製装置に関するあらゆる導入や保守に対応しております。
用途・純度・使用量から機種を選定し、導入まで一括対応
PSA式・膜分離式の手配から据付、配管・電気工事まで
既存装置の更新や、純度・容量の見直しにも対応
吸着剤やフィルターの交換、定期点検で安定運転を維持
純度低下や異常停止などの不具合に、部品交換で迅速に対応
経年劣化した吸着剤を交換し、低下した窒素純度を回復
コンプレッサーやドライヤの見直しで、装置への負荷を軽減
供給先までの配管新設・改修や、使用点の増設に対応
実使用時の純度や流量を測定し、過剰スペックの是正を提案
費用の目安
窒素ガス精製装置の費用は、方式、容量、純度、付帯工事によって大きく変動します。以下はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は現地調査のうえでお見積りいたします。
装置本体価格
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 小型膜分離式(小流量・低純度) | 数百万円〜 |
| 中型膜分離式 | 数百万円〜千万円程度 |
| 小型PSA式 | 数百万円〜 |
| 中型PSA式 | 千万円〜数千万円 |
| 大型PSA式・特殊高純度 | 数千万円〜 |
| オイルフリーコンプレッサー内蔵型PSA | 上記+数百万円〜 |
設置工事費
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 標準的な据付・配管・電気工事 | 数百万円〜 |
| 大規模システム工事 | 個別見積り |
別途発生する可能性のある費用
コンプレッサー増設・更新、エアタンク(バッファ)追加、エアドライヤー・フィルター系統、窒素バッファタンク、工場内窒素配管敷設、既存ボンベ保管庫・液体窒素タンクの撤去、基礎工事、試運転・調整、補助金申請費用など。
窒素ガス精製装置の設置工事の流れ
各項目の詳細は以下の通りです。
1. 現状調査・診断
- 現在の窒素ガス使用量(月間・年間)
- 現在の供給方法(ボンベ・液体窒素)と費用
- 必要な純度、流量
- 用途、使用パターン
- 既存コンプレッサーの容量
- 設置スペース
- 業務影響、停止可能時間
2. 提案・お見積り
- PSA式・膜分離式の選定、純度・容量の決定、装置メーカー・機種の選定、周辺機器(コンプレッサー、ドライヤー、バッファタンク等)の検討、コストメリット試算(投資回収期間の見える化)、補助金活用可能性の確認、概算費用・工期の提示を行います。
3. 詳細設計
- 装置レイアウト、配管設計、電気・制御設計、既設設備との取り合いを検討します。
4. 各種準備
- 装置・部材の手配、補助金申請(必要時)、各種申請・届出への対応を行います。
5. 施工計画
- 業務影響を最小化する工程の検討、既設供給(ボンベ・液体窒素)との並行運用、切替えタイミング、安全対策を計画します。
6. 工事実施
- 装置の搬入・据付、基礎工事(必要時)、圧縮空気配管接続、窒素配管敷設、電気・制御配線、周辺機器の設置を行います。
7. 試運転・性能確認
- 純度測定、流量測定、圧力安定性確認、制御動作確認、警報試験を実施します。
8. 既存供給との切替え
- 既存ボンベ・液体窒素タンクの撤去手配、並行運転による安全な切替えを行います。
9. 引き渡し
- 取扱説明、運転マニュアル、純度・流量データの記録、定期メンテナンス計画、緊急時対応マニュアルをお渡しします。
よくあるご質問
Q. 自家製造への切替えで、どれくらいコストが下がりますか?
現状のガスコスト、使用量、純度要求により異なりますが、年間ガスコストを30〜70%程度削減できるといわれています。具体的な削減効果は工場ごとに異なるため、現状の使用量・単価を踏まえた試算をおすすめします。
Q. PSA式と膜分離式、どちらを選べばよいですか?
高純度(99%超)が必要ならPSA式、中〜低純度で十分なら膜分離式が基本的な目安です。用途、必要純度、容量、初期投資を踏まえて総合的にご提案します。
Q. ボンベ・液体窒素タンクから自家製造への切替えは可能ですか?
はい、可能です。並行運転による切替えで、業務影響を最小化します。
Q. うちのコンプレッサーで対応できますか?
コンプレッサーの吐出量、空気品質を診断のうえお答えします。容量不足の場合、コンプレッサー増設・更新もご提案します。
Q. 純度はどれくらい必要ですか?
用途によって異なります。配管パージなら90〜95%程度、樹脂成形なら99〜99.9%程度、半導体なら99.999%以上といった目安があり、用途分析を踏まえて最適な純度をご提案します。
Q. 設置スペースはどれくらい必要ですか?
容量・方式により異なります。膜分離式は比較的コンパクトな傾向があり、PSA式はやや広めのスペースが必要になる場合があります。現地確認のうえご提案します。
Q. 24時間稼働できますか?
はい。安定した連続運転に対応する機種が多くあります。コンプレッサーが連続運転に対応していれば、長期連続供給が可能です。
Q. BCP対応で導入を検討しています。
自家製造は配送・物流に依存しないため、災害時の供給確保に有効とされています。蓄電池併用、コンプレッサー多重化など、より本格的なBCP対応もご相談に応じてご提案できます。
Q. 業務を止めずに設置できますか?
はい。既存供給(ボンベ・液体窒素)との並行運転で、業務影響を最小化して切り替えることが可能です。
Q. 補助金は使えますか?
省エネ・カーボンニュートラル関連の補助金で、装置導入が対象となるケースがあります。年度ごとに要件が変わるため、計画段階での確認をおすすめします。
Q. 食品工場で導入したいです
はい。衛生管理の観点や食品包装用途に適した純度・流量で設計します。
Q. 緊急対応はしてもらえますか?
はい。装置停止、純度異常など、東海3県エリア内ではできる限り迅速に対応します。
Q. コンプレッサーやエアタンクと同時に整備できますか?
はい。コンプレッサーシステム全体の最適化、エアタンクの法定検査・更新も含めて一括対応します。
基礎知識
ここから下は、この工事に関する基礎知識をまとめたコンテンツです。検討中の方が知っておきたい判断材料を解説します。
「ボンベ・液体窒素を買う」から「自社で作る」への変化
工場で窒素ガスを使用している現場の多くで、長年一般的だったのが、ボンベや液体窒素タンクで購入するという供給方法でした。
樹脂成形での酸化防止、食品包装、レーザー加工アシスト、熱処理、半導体製造、配管パージなど、どの用途でも決まった頻度でボンベや液体窒素が運ばれてきて消費していくというスタイルです。
近年、徐々に普及が進んでいるのが窒素ガス精製装置(窒素ガス発生装置)による自家製造です。
空気の組成は約78%の窒素と21%の酸素で構成されており、他のガスも少量含まれているとされています。この性質を利用し、適切な分離装置があれば、コンプレッサーで作った圧縮空気から窒素を取り出すことができます。
原料が空気であるため、ボンベ・液体窒素の購入と比べて継続的なコストを抑えやすく、配送遅延や供給途絶のリスクを減らせる点が、窒素ガス自家製造の主な価値とされています。
実際、ボンベ・液体窒素から自家製造への切り替えにより大きくコストを削減できた事例が複数のメーカーから報告されており、75%のコストダウンで年間226万円の節約を実現したとされています。
削減率は使用量や現状のガス単価によって幅がありますが、一般的に30〜70%程度の削減が期待できます。
コスト以外に軽減が期待できる負担
- ボンベ交換の手間
- ボンベ保管庫の管理
- 液体窒素タンクの定期更新
- 急な納品遅延への対応
- 残量管理・発注業務
加えて、窒素ガス自家製造は事業継続計画(BCP)の観点でも有効とされています。災害時や物流の混乱時など、配送の影響を受けやすい場面でも、コンプレッサーが稼働していれば窒素を作り続けられるためです。
窒素ガスの工場での主な用途
窒素ガスは「無味・無臭・無色・不活性・不燃」という特性から、工場で多種多様な用途に使われています。
業種によって主に求められる用途には傾向の違いがあります。
業種別に多い用途の傾向
- 自動車関連工場:タイヤ・燃料タンク・塗装
- 樹脂成形工場:成形機の酸化防止
- 食品工場:ガス置換包装・長期保存
- 化学・薬品工場:反応器・配管パージ
- 金属加工:レーザー切断アシスト・熱処理
- 電子部品:高純度雰囲気・パージ
このような用途が中心になりやすいとされていますが、実際の選定は個別の工程・要求純度に応じて検討する必要があります。
1. 酸化防止・不活性化(パージ)
最も普及している用途の一つです。設備・配管・容器内の酸素を窒素で置き換える(パージする)ことで、酸化反応や燃焼が起きにくい状態を作ります。
例えば、引火性の液体を保管するタンクでは、気相部と呼ばれる液面の上の空間に窒素を満たしておく「ブランケット」という手法がよく使われます。
タンク内を窒素で満たして気相部を周囲よりわずかに高い圧力に保つことで、外部からの空気の侵入を防ぎ、内部の液体の蒸発や酸化を抑え、引火・爆発のリスクを抑える効果が期待できます。
主な適用先
- 化学反応器のパージ
- 配管のパージ
- 油類タンクのブランケット
- 危険物保管エリアの不活性化
2. 樹脂成形・射出成形
樹脂を加熱して溶かす成形工程では、樹脂が高温の状態で長く酸素に触れると、変色・黄変や焼け焦げのような外観不良が起きやすくなります。これは熱と酸素が組み合わさって樹脂が劣化する「熱酸化」と呼ばれる現象が原因です。
樹脂を加熱する加熱筒という装置の中や、樹脂を投入する入口付近に窒素を供給して酸素を置き換えることで、この劣化を抑え、変色や焼けのない製品を作りやすくなります。
3. 食品包装・食品保存
食品包装内の酸素を窒素で置換することで、酸化やカビ・菌の発生を防ぎ、賞味期限の延長につながります。
主な適用先
- スナック菓子、ナッツ、コーヒー豆の包装
- 食用油のタンク貯蔵
- ワイン、ビールの貯蔵
- お茶、乾物の長期保存
- 青果物のCA貯蔵
4. 熱処理・焼結
金属やセラミックを高温で加熱処理する際、空気中の酸素に触れると、表面が酸化して変色したり、強度が落ちたりすることがあります。
そこで加熱する炉の中の空気を窒素に置き換えることで、酸素との接触を断ち、製品の表面品質や強度を保ちやすくする、という使い方がされています。
これは「雰囲気ガス」と呼ばれる手法の一つで、窒素は反応性が低いため、多くの熱処理工程で広く使われています。
主な適用先
- 焼鈍、焼結、ろう付け
- 真空炉のパージ
- セラミック焼成
5. レーザー加工アシスト
レーザーで鋼材を切断する際、切断部分に酸素を吹きかけて燃焼を助ける方法が一般的です。ただ、この方法では切断面に黒っぽい酸化被膜ができてしまい、後工程で被膜を除去する手間が発生することがあります。
窒素を使う場合は、酸素を遠ざけながら切断するため、酸化被膜のできない光沢のある切断面が得られ、被膜除去の工程を省略できる点がメリットとされています。この方法をクリーンカットと呼び、ステンレスなどの加工で広く利用されています。
一方で、酸素を使う場合に比べて切断速度が落ちやすく、使用するガス量も多くなるため、コストが上がる場合がある点には注意が必要です。
6. 半導体・電子部品製造
クリーン製造プロセスの雰囲気ガス、配管パージ、装置パージなどに使われます。99.999%以上といった高純度が求められる用途です。
7. 化学・薬品
危険物・引火性物質の取り扱い、反応器の不活性化、配管パージなどに使用されます。
8. 医療・医薬品
医薬品製造プロセス、輸液製造、医療機器の不活性化などに使用されます。
9. 自動車関連
窒素分子は酸素より大きくゴムの隙間を通り抜けにくいため、タイヤへの窒素充填を行うことで空気圧が下がりにくく、安定した状態を保ちやすくなるといわれています。また水分をほとんど含まないため、温度変化による圧力変動を抑えやすいとされています。
ただし、転がり抵抗や燃費といった性能面では、通常の空気と比べて明確な差はないとする見解を示すメーカーもあり、効果の大きさについては評価が分かれる部分もあります。
燃料タンクの不活性化、塗装ブースのアシスト、組立工程などにも使用されます。
10. その他特殊用途
- 配管漏れ検査
- 配管・タンクの洗浄
- 消防設備(窒素消火)
- 冷却(液体窒素)
窒素ガス供給の3つの方法|「ボンベ」「液体窒素」「自家製造」
工場での窒素ガス供給には、大きく3つの方法があります。
1. ボンベ供給(高圧ガスボンベ)
鋼製ボンベに高圧窒素を充填し、工場に配送・設置するという古くから普及している供給方法です。
少量利用やスポット使用に向いていますが、継続的に使う場合はガスコストが割高になりやすく、ボンベ交換の手間や保管スペースの確保、高圧ガス保安法の規制対応なども必要になります。
メリット
- 高純度(99.99%以上)が容易
- 少量利用に向く
- 初期投資が小さい
- 機動性がある
デメリット
- 継続的なコストが高くなりやすい
- ボンベ交換の手間
- ボンベ保管スペースが必要
- 高圧ガス保安法の規制対象
- 配送遅延、供給途絶リスク
- 残量管理の手間
主な向いている条件
- 少量利用
- スポット使用
- テスト・研究用途
2. 液体窒素タンク(CE:コールドエバポレータ)
液体窒素を貯蔵タンクに保管し、気化させて使用する方法です。
大量・連続利用や高純度が必要な用途に向いています。ですが、タンクのリース料や配送料が高額になりやすく、気化によるロス(蒸発量)が発生する点や、寒冷時の凍結対策が欠かせない点には注意が必要です。
メリット
- 大量供給に対応
- 高純度(99.999%以上)
- 安定供給
- 液体冷凍用途にも使える
デメリット
- タンクのリース料、配送料が高額になりやすい
- 気化ロス(蒸発量)が発生
- タンクの定期検査、更新が必要
- 寒冷時の凍結対策が必要
- 高圧ガス保安法の規制対象
主な向いている条件
- 大量・連続利用
- 高純度要求
- 液体窒素も使う用途
3. 窒素ガス自家製造(窒素ガス発生装置)
コンプレッサーの圧縮空気から窒素を分離・精製する装置で、工場内で窒素を生成する方法です。
継続的な使用量が多い工場では、ガスコストを抑えやすく、配送に依存しないため供給が安定しやすいとされています。
一方で、初期投資が必要になる点、コンプレッサーの電力消費が発生する点には注意が必要です。
メリット
- 継続的なガスコストを削減できる場合がある(年間30〜70%程度)
- 配送、供給途絶リスクが小さい
- ボンベ交換、タンク管理が不要
- 必要な時に必要な量を生成できる
- BCP対応に優れる
- 輸送に伴うCO₂排出の削減につながる場合がある
デメリット
- 初期投資(数百万円〜)が必要
- コンプレッサーの電力消費が発生する
- 定期メンテナンスが必要
- 純度、容量の選定が重要
主な向いている条件
- 中〜大量の継続利用
- コスト削減重視
- BCP対応重視
比較表
| 項目 | ボンベ | 液体窒素 | 自家製造 |
|---|---|---|---|
| 初期投資 | 小 | 小 | 中〜大 |
| ガスコスト | 高 | 中〜高 | 低 |
| 純度 | 99.99%+ | 99.999%+ | 95〜99.999% |
| 供給安定性 | 配送依存 | 配送依存 | 自社完結 |
| 管理負担 | 大 | 中 | 小 |
| BCP対応 | △ | △ | ◎ |
| 大量供給 | × | ◎ | ◎ |
| 設置スペース | 保管庫 | タンク敷地 | 設置スペース |
月のガスコストが一定の規模を超え、継続的かつ安定的に窒素を使用する工場では、自家製造への切り替えで相応のコスト削減が期待できます。現状のガスコストと使用量を踏まえた診断が大切です。
窒素ガス精製装置の2つの方式|「PSA式」と「膜分離式」
工場用の窒素ガス精製装置には、大きく分けてPSA式と膜分離式の2方式があります。
PSA方式(Pressure Swing Adsorption:圧力スイング吸着)
吸着剤を使い、圧縮空気から酸素だけを選んで吸着・除去し、窒素を取り出す方式です。
仕組み
- 圧縮空気を吸着塔に通す
- 吸着剤が酸素を選択的に吸着する
- 窒素はそのまま通過し、出口から取り出される
- もう一方の塔では減圧して酸素を放出(再生)する
- 2つの塔で吸着・脱着を交互に繰り返す
この仕組みは、窒素と酸素の分子の大きさによる吸着速度の差を利用したもので、加圧すると分子の小さい酸素が吸着され、減圧すると吸着した酸素が脱着されるという性質を利用しています。
メリット
- 高純度(95〜99.999%)まで対応可能
- 純度を要求に応じて調整可能
- 中〜大容量対応
- 安定した純度・流量
デメリット
- 膜分離式より構造が複雑
- 吸着剤の定期交換が必要
- 初期投資が膜分離式より高めになりやすい
主な用途
- 高純度を求める工場
- 樹脂成形、レーザー切断
- 半導体、医薬品、食品包装
膜分離方式(メンブレン式)
半透過性の中空糸膜を使って、圧縮空気から窒素を分離する方式です。中空糸膜は極細のストロー状の繊維で、膜分離方式の窒素ガス精製装置の中で窒素と酸素を分けている部品です。
仕組み
- 圧縮空気を膜モジュールに通す
- 酸素・水・二酸化炭素は膜を透過しやすく、膜の外側から排出される
- 窒素は透過しにくいため、膜の中を通り抜けて出口へ送られる
- 連続運転で安定供給する
メリット
- シンプルな構造でメンテナンス性に優れる
- 装置がコンパクト
- 初期投資が比較的安い
- 起動が早い
- 可動部が少なく、低騒音
デメリット
- 高純度域(99%超)では効率が落ちやすい
- 低〜中純度(90〜99%程度)向け
- 純度調整の幅がPSA式より狭い
- 経年で膜性能が低下する
主な用途
- 中〜低純度で十分な用途
- 配管パージ、タンクブランケット
- 酸化防止が目的の用途
比較表
| 項目 | PSA方式 | 膜分離方式 |
|---|---|---|
| 初期投資 | 中〜高 | 低〜中 |
| メンテナンス | 吸着剤交換等 | 膜交換 |
| 起動時間 | 数分〜 | ほぼ即時 |
| 純度調整 | 広範囲対応 | 限定的 |
純度の選び方|「使用用途に応じた純度」がコスト最適化の鍵
窒素ガスの純度は、用途に応じて選定する必要があります。純度が高いほど装置コストも高くなる傾向があるため、用途に合わせた選定が経済性のポイントです。
純度別の主な用途
90〜95%(低純度)
- 配管パージ
- タンクブランケット
- 一般的な酸化防止
- タイヤ充填窒素
95〜99%(中純度)
- 樹脂成形(一般用途)
- 食品包装(菓子等)
- 一般的な不活性化
- 熱処理(雰囲気ガス)
99〜99.99%(高純度)
- 樹脂成形(高品質要求)
- ファイバーレーザー切断
- 食品包装(高品質要求)
- 一部の熱処理
99.99〜99.999%(超高純度)
- 半導体製造
- 電子部品クリーン製造
- 医薬品製造
- 一部の精密熱処理
99.9999%以上(超々高純度)
- 半導体先端プロセス
- 特殊化学プロセス
必要以上の高純度を選ぶと、装置サイズ・電力・コストが過大になりやすいです。そのため、用途分析を踏まえた選定が重要です。
容量の選び方|「ピーク」と「平均」のバランス
窒素ガスの必要容量は、以下の要素から決まります。
- 平均消費量と最大消費量
- 使用パターン
- バッファタンクの活用
- 将来の拡張性
- コンプレッサーの能力
1. 平均消費量と最大消費量
日常的な平均消費量、連続使用時の最大消費量、瞬間ピークの大きさを把握する必要があります。
確認しておきたい数値
- 日常的な平均消費量(Nm³/h)
- 連続使用時の最大消費量
- 瞬間ピークの大きさと発生頻度
2. 使用パターン
連続使用か断続使用か、24時間稼働か日中稼働か、季節変動があるかどうかも検討材料になります。
整理しておきたい項目
- 連続使用か、断続使用か
- 24時間稼働か、日中稼働か
- 季節変動の有無
3. バッファタンクの活用
ピーク消費に対応するため、窒素バッファタンクを併設するのが一般的です。バッファタンクを使用することで窒素を貯留できるため、装置容量を平均消費量ベースで設計しやすくなります。
4. 将来の拡張性
- 生産量増加の見込み
- 用途追加の可能性
- 容量増設の余地
これらも踏まえて検討します。
5. コンプレッサーの能力
窒素発生装置はコンプレッサーから供給される圧縮空気を使うため、コンプレッサーの吐出量が窒素生成能力の上限を左右します。
必要な空気量は窒素の純度によって変わり、求める純度が下がるほど分離の手間が減るため、必要空気量は少なく、逆に超高純度を求めるほど、同じ窒素量を作るためにより多くの圧縮空気が必要になるとされています。
「ボンベ・液体窒素から自家製造への切り替えは、現状のコンプレッサーで対応できるのか?」この点を事前にチェックしておくことも重要です。コンプレッサーの増設・更新が必要な場合もあります。
窒素ガス自家製造のコストメリット試算
実際にどの程度のコストメリットがあるのか、考え方を整理しておきましょう。
主な比較項目
ボンベ・液体窒素のコスト
- ガス料金(円/Nm³)
- ボンベ・タンクのリース料
- 配送料
- 残量管理コスト
- 気化ロス(液体窒素)
自家製造のコスト
- 初期投資(装置・設置・配管)
- 電気代(コンプレッサー)
- メンテナンス費(フィルター・吸着剤・膜)
- 装置の減価償却
投資回収期間の目安
業種、消費量、現状のガス単価により大きく変動しますが、一般的な傾向として、現状のガスコストが高い工場ほど投資回収が早くなりやすいといわれています。
具体的な回収期間は工場ごとの状況によって差が大きいため、現状のガス使用量・単価を踏まえた個別の試算が重要です。
試算で見落としがちな項目
単純なガス料金の比較だけでは見えてこないコストもあります。例えば、ボンベ交換やタンクの残量確認を担当者が行う場合、その作業にかかる時間も実質的なコストです。
また、ボンベの納品が予定通りに来ず、生産が一時的に止まってしまった場合の損失も、本来は比較に含めるべき項目です。
さらに、配送トラックが排出するCO₂や、高圧ガス保安法に基づく書類整備・点検対応の手間も、自家製造であれば発生しないコストです。
比較に含めておきたい「隠れたコスト」
- ボンベ交換・タンク管理の人件費
- 急な納品遅延への緊急対応コスト
- 在庫不足による生産停止損失
- 配送車両のCO₂排出(カーボンニュートラル評価)
- 高圧ガス保安法対応の管理コスト
これら隠れたコストも含めると、自家製造の経済性がさらに高く評価できるケースもあります。
周辺機器・付帯設備
窒素ガス精製装置の安定稼働には、本体だけでなく周辺機器の整備が重要です。
コンプレッサー
原料となる圧縮空気を供給する設備です。窒素ガス装置と一体で計画することが重要です。オイルフリー機、または高効率なエアフィルターを備えた給油式が推奨されます。
エアタンク(バッファ)
コンプレッサーから供給される圧縮空気を安定化させる役割を持ちます。
エアドライヤー
圧縮空気中の水分を除去する機器です。
PSA方式の吸着剤や膜分離方式の膜は、酸素だけでなく水分も吸着・透過しやすい性質があります。原料となる空気に水分が多く含まれていると、本来酸素の分離に使われるべき吸着剤・膜の働きが水分に取られてしまい、窒素の分離効率が落ちたり、劣化が早まったりする可能性があります。
そのため、窒素装置の手前でしっかり除湿しておくことが、装置の性能と寿命を保つうえで重要とされています。
フィルター類
段階的なフィルターで装置を保護します。
主なフィルター構成
- プレフィルター
- ファインフィルター
- 活性炭フィルター(オイルミスト除去)
窒素バッファタンク
生成した窒素を一時貯留するタンクです。ピーク使用への対応、圧力安定化に重要な役割を持ちます。
なお、窒素ガス発生装置で使われる容器は、第二種圧力容器や高圧ガス保安法の規制対象外となる場合が多く、設置にあたって特別な届出が不要なケースが一般的とされています。
ただし、装置に内蔵・併設されるタンクの仕様によって扱いが異なる可能性があるため、個別に確認することが大切です。
圧力調整・流量調整装置
使用点での圧力・流量を適切に制御するための機器です。
純度・流量計測機器
オンラインでの純度監視、流量監視を行う機器です。
窒素配管
工場内の窒素使用点への配管です。配管系の識別表示はJIS Z 9102で「水」「油」「蒸気」「ガス」「空気」など物質ごとの識別色が定められていますが、窒素単体を対象とした専用の識別色は規定されていません。
窒素配管は一般に「ガス」の区分(うすい黄)で表示されるか、各工場の管理ルールに応じて識別されることが多いため、設計段階で表示方法を取り決めておくことをおすすめします。
制御・監視システム
主な機能
- タッチパネル制御
- 純度異常・流量異常の警報
- 遠隔監視(IoT対応)
- データロギング
窒素ガス精製装置の保守・メンテナンス
窒素ガス精製装置を長期安定稼働させるには、計画的な保守が重要です。
日常点検
- 純度モニターの確認
- 流量・圧力の確認
- 異常警報の確認
- ドレン排出の確認
月次・四半期点検
- フィルター点検・清掃
- 配管接続部の漏れ確認
- 各種弁の動作確認
- ドレン処理装置の点検
年次定期保守
- フィルター類の交換
- ドライヤー保守
- 安全弁点検
- 計装類の校正
- 制御系の総合点検
数年周期の保守
PSA式の場合
- 吸着剤(CMS)の交換:使用状況により数年〜10年程度を目安に実施
- 吸着塔の内部点検
- 切替弁の整備
膜分離式の場合
- 膜モジュールの交換:使用状況により数年〜10年程度を目安に実施
- フィルター系統の総合保守
吸着剤・膜の交換周期は、使用頻度や原料空気の品質によって変わるため、メーカーの推奨スケジュールに従うことが基本です。
コンプレッサー・周辺機器の保守
- コンプレッサーのオーバーホール
- エアタンクの定期検査
- ドライヤー保守
- バッファタンクの点検
純度低下への対応
純度低下の原因は多岐にわたります。
主な原因と対応
- フィルターの詰まり → 交換
- 吸着剤・膜の劣化 → 交換
- 圧縮空気の品質低下 → コンプレッサー側の対応
- 制御不良 → 修理
純度低下は製品品質に直結するため、早期発見・早期対応が重要です。
工場の窒素ガスは、酸化防止や不活性化など製品品質に直結する用途で使われますが、ボンベや液体窒素での購入を続けている間にも、ガス代・容器の管理・入替えの手間が静かに積み重なっていきます。
必要な純度と流量を見極めたうえでの自家製造への切替えは、ガスコストの削減、供給の安定、BCP対応のいずれの観点からも、現代の工場における有力なユーティリティ投資の一つといえるでしょう。
「ボンベから自家製造に切り替えたい」「コストメリットを試算してほしい」「PSA式と膜分離式のどちらが合うか知りたい」「純度が落ちてきたので点検してほしい」など、どんな段階のご相談でも承っております。
愛知・三重・岐阜の工場で、窒素ガス供給設備のことでお困りごとがありましたら、ぜひお問い合わせください。現地調査とコストメリット試算を含むお見積りは無料です。方式・純度・容量の選定、コンプレッサーなど周辺設備との一体提案、メーカー横断対応、補助金活用、定期メンテナンスまで、専門知識と現場経験を持つスタッフが、御社のガスコスト削減と安定供給を支える最適なご提案をいたします。