工場の真空設備(ポンプ・配管)|真空ポンプの設置・更新・リーク対策
工場の生産現場では、コンプレッサによる加圧と並んで、真空(減圧)の技術が幅広い工程を支えています。樹脂成形のガス抜き、部品の吸着搬送、真空乾燥、真空包装など、用途は多岐にわたります。
一方で真空設備は「動いていれば良い」と見過ごされやすく、性能の低下に気づきにくいという特徴もあります。また、近年は油を使わないドライ式への転換も進んでおり、選定や保守の考え方も変化してきています。
本記事では、工場の真空設備(真空ポンプ・真空配管・リーク対策)について知っておきたいポイントを整理してお伝えします。
目 次
突発の性能低下から更新・リーク対策、ドライ式への転換まで、内容を問わずご相談いただけます。当てはまるものがあれば、まずは無料診断からご案内します。
01性能低下・修理
- 到達真空度が落ちてきた
- 真空ポンプが止まった、すぐ対応してほしい
- 異音・振動が大きくなった
- リークの調査と修理をしてほしい
02オーバーホール
- 定期オーバーホールを依頼したい
- 予防保全契約を結びたい
03油回転式からドライ式への転換
- オイル交換が大変、ドライ式への転換を検討している
- 食品・医薬品でクリーン化が必要
- 電子部品プロセスで油煙汚染を排除したい
- 廃油処理コストを削減したい
04新規導入
- 新規ラインで真空設備を導入したい
- 樹脂成形機の真空システムを整備したい
- 真空チャック・吸着搬送を新設したい
- セントラル真空システムを構築したい
05設備更新
- 設置から長年経つので更新したい
- 容量増設、性能アップが必要
- 真空配管を総合的に更新したい
06リーク対策
- リークの調査・原因を特定してほしい
- ヘリウムリークテストをお願いしたい
- 古い配管の漏れを補修したい
07食品工場・医薬品工場対応
- 衛生管理対応の真空包装機を導入したい
- 医薬品プロセスのクリーン真空に対応したい
- 衛生区画でドライポンプを使いたい
08半導体・電子部品
- 高真空・超高真空システムを構築したい
- ターボ分子ポンプとの組み合わせを検討している
09関連工事との連動
- コンプレッサーと同時に真空も整備したい
- 配管全体を総合更新したい
- コントロール・監視システムを整備したい
10補助金活用
- 省エネ補助金でドライ式に更新したい
- カーボンニュートラル対応の補助金を活用したい
11緊急対応
- 真空ポンプが急停止、生産が止まっている
- リークで真空が立たない
真空設備の対応修理や工事
弊社では、真空ポンプ・真空配管に関するあらゆる修理や工事に対応しております。
到達真空度の低下や異音などの不具合に部品交換で対応
分解洗浄と部品交換で、真空度と排気速度を回復
必要真空度・排気速度から選定し、据付まで対応
油回転式からドライポンプへ切替え、油汚染を解消
配管の新設・改修や、継手・バルブの更新に対応
ヘリウムリークディテクタ等で漏れを特定し補修
真空計やコントローラの校正・交換に対応
真空ポンプ油やミストフィルターの定期交換
食品・医薬品・電子部品向けの仕様選定と施工
費用の目安
真空設備の費用は、種類、容量、用途、付帯工事によって大きく変動します。以下はあくまで一般的な目安です。
真空ポンプ本体
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 小型油回転式 | 数十万円〜 |
| 中型油回転式 | 数十万円〜数百万円 |
| 大型油回転式 | 数百万円〜 |
| 小型ドライ式(クロー、スクロール) | 数十万円〜数百万円 |
| 中〜大型ドライ式(スクリュー、多段ルーツ) | 数百万円〜千万円程度 |
| ターボ分子ポンプ(高真空用) | 個別見積り |
設置工事費
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 標準的な据付・配管・電気工事 | 数十万円〜数百万円 |
| 大規模システム工事 | 個別見積り |
真空配管工事
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 標準ステンレス真空配管 | 数千円〜数万円程度/m |
| 高真空対応配管(CFフランジ等) | 別途 |
| セントラル真空システムの配管 | 個別見積り |
修理・オーバーホール
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 軽微な修理・部品交換 | 数万円〜十数万円 |
| 中型ポンプのオーバーホール | 数十万円〜百万円程度 |
| 大型ポンプのメジャーオーバーホール | 百万円〜数百万円 |
リーク試験
| 内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 標準的なリーク試験 | 数万円〜十数万円 |
| ヘリウムリークテスト | 十数万円〜数十万円 |
| 大規模システムの総合試験 | 個別見積り |
別途発生する可能性のある費用
既設撤去・廃材処分、オイル・廃油処理、基礎工事、防振装置、防音・換気工事、コントロール・監視システム、電気工事、試運転・性能確認など。
真空設備工事の流れ
各項目の詳細は以下の通りです。
1. 現地調査・診断
- 既存真空設備の仕様、設置年、運転状況、プロセス要求(到達真空度、排気速度)、使用ガス・粉塵・水分の有無、配管状況、使用点、リーク状況の把握、業務影響・停止可能時間を確認します。
2. 提案・お見積り
- 修理・整備の場合:不具合診断、必要部品、修理範囲と費用
- オーバーホールの場合:オーバーホール範囲、必要部品・工期、仮設対応の検討
- 更新・新規設置の場合:油回転式かドライ式かの選定、機種・容量の選定、配管・付帯設備の検討、コストメリット試算、補助金活用の検討
3. 詳細設計
- 設置レイアウト、配管設計、電気・制御設計、既設との取り合いを検討します。
4. 各種準備
- 部品・装置の手配、仮設対応の準備、工事計画書の作成を行います。
5. 施工計画
- 業務影響を最小化する工程の検討、既存設備の停止計画、安全対策を計画します。
6. 工事実施
- 修理・オーバーホール:分解、点検、部品交換、組立、調整、真空度測定、性能確認
- 更新・新規工事:既設撤去、基礎工事、新規据付、配管接続、電気工事、試運転、性能確認
7. リーク試験
- 圧力立上り試験、ヘリウムリーク試験(高真空時)、全配管系のリーク点検を実施します。
8. 性能測定・調整
- 到達真空度の測定、排気速度の測定、振動・騒音測定、安全装置の動作確認を行います。
9. 引き渡し
- 取扱説明、運転マニュアル、定期点検計画、メンテナンス契約のご相談を行います。
よくあるご質問
Q. 真空ポンプが止まりました、すぐ対応できますか?
はい。東海3県エリア内では可能な限り迅速に駆けつけます。応急対応、仮設機の手配、本格修理まで対応します。
Q. 油回転式とドライ式、どちらを選べばよいですか?
クリーン要求が低く初期投資を抑えたい場合は油回転式、クリーン要求が高い場合やランニングコストを下げたい、メンテナンス工数を減らしたい場合はドライ式が適しています。プロセス要求や使用環境を踏まえてご提案します。
Q. 油回転式からドライ式への転換でメリットはありますか?
はい。オイル代・廃油処理費の削減、メンテナンス工数削減、プロセス清浄化、作業環境改善など、複数のメリットが期待できます。
具体的な投資回収期間は使用状況によって異なるため、現状のコストを踏まえた試算をおすすめします。
Q. 到達真空度が落ちてきました。
リーク、ポンプ性能の低下、フィルターの詰まりなど、複数の原因が考えられます。診断のうえ、適切な対策をご提案します。
Q. 樹脂成形機の真空システムを整備したいです。
はい。ガス抜き、真空チャック、含浸など、樹脂成形に必要な真空システムを設計・施工します。
Q. 食品工場でドライポンプに変えたいです。
衛生管理の観点から、油煙汚染のないドライポンプへの転換を検討される工場が増えています。最適な機種・容量をご提案します。
Q. オーバーホールの周期は?
機種・条件によって幅がありますが、一般的な目安として油回転式は3〜5年程度、ドライ式は3〜7年程度とされています。使用状況により前後しますので、メーカーの推奨スケジュールも併せてご確認ください。
Q. 業務を止めずに更新できますか?
仮設機の手配、夜間・休日施工、段階施工で業務影響を最小化します。
Q. コンプレッサーや配管と同時に整備できますか?
はい。ユーティリティ設備の総合整備として、コンプレッサー、エアタンク、配管、防音、換気と一括対応します。
基礎知識
ここから下は、この工事に関する基礎知識をまとめたコンテンツです。検討中の方が知っておきたい判断材料を解説します。
「目に見えない真空」が、生産品質と歩留まりを左右する
工場の生産現場で、コンプレッサ(加圧)と並んで重要なのが真空(減圧)の世界です。
真空技術に支えられている主な工程
- 樹脂成形での型内ガス抜き
- 真空チャック(吸着搬送)
- 真空炉・含浸装置
- 真空乾燥・コーティング
- 真空包装
- 半導体プロセス
これらは、大気圧より低い圧力(真空)を作り出す技術に支えられています。
真空設備は、加圧設備(コンプレッサ)と同様に「動いていれば良い」と放置されがちな傾向にあり、さらに真空は目に見えないため、性能の低下に気づきにくい面があります。
そのため、「吸引できているから問題ない」と思っているうちに、到達真空度が低下し、製品歩留まりに影響が出たり、サイクルタイムが伸びてしまう可能性が考えられます。
加えて、真空システムで特に注意したい課題が「リーク(漏れ)」です。真空配管は加圧配管とは逆に、大気圧側から真空側へ気体が引き込まれる方向に働くため、わずかな漏れも到達真空度の悪化につながりやすいです。
継手・パッキン・溶接部・配管材質など、真空に求められる施工品質は、加圧配管とは異なる観点が必要です。
従来の油回転式からドライ式へ
真空ポンプはここ十数年で変化が進んでいます。
従来の油回転式(オイルロータリ)から、油を使わないドライ式(クロー、スクリュー、多段ルーツなど)への転換が進んでおり、次のような課題から解放される選択肢が広がっています。
- 油煙による汚染
- オイル交換コスト
- 廃油処理の手間
ドライ式は特に食品、医薬品、電子部品、樹脂成形などクリーン要求の高い業界で採用されています。
工場での真空設備の主な用途
真空は工場の多種多様な工程で使われています。主な用途を整理しておきましょう。
樹脂成形・射出成形
金型キャビティ内の空気を真空で抜きながら樹脂を流し込む手法です。
型内の空気が十分に抜けていないと、次のような不良が起きやすくなります。
- 樹脂が型の隅々まで届かない(ショートショット)
- 焼け焦げ(ヤケ)
- 気泡(ボイド)
真空によるガス抜きはこれらを防ぐ目的で行われ、製品品質の向上や不良率の低下にもつながる効果があります。
真空チャック・真空吸着搬送
平らな部品、樹脂シート、ガラス板、半導体ウエハ、紙、フィルムなどを、空気を吸い込む力で吸着して搬送・固定する用途です。
バキュームパッドやチャックを用いるロボット搬送、コンピューターを使って自動で素材を高精度に削り出すCNC加工時の固定などに使用されます。
真空乾燥
真空乾燥とは、低温・低圧の環境で水分を蒸発させることで、熱に弱い材料を効率的に乾燥させる手法です。
気圧が低いほど水の沸点が下がるため、低い温度でも乾燥が進みやすくなる、という原理が利用されています。食品、薬品、樹脂、塗料、化学品などで活用されています。
含浸装置
真空状態で、多孔質材料、金属鋳物、電子部品、コイルに樹脂・薬液・防錆剤を浸透させる手法です。
真空にすることで材料内部の気体が抜け、薬液が隙間まで浸透しやすくなるとされています。
主な適用先
- 鋳物のピンホール処理
- モーターコイルの絶縁
- コンクリート含浸
真空炉・熱処理
金属、セラミック、半導体の熱処理を真空雰囲気で行う用途です。
真空雰囲気とは、大気圧よりも減圧された密閉状態の空間を指し、酸化防止、脱ガス、ろう付けなどに活用されています。
真空包装
食品、医薬品、精密部品を真空状態で包装する手法です。酸化防止、賞味期限の延長、湿気防止といった効果が得られます。
真空脱泡・脱気
接着剤、塗料、樹脂、シリコーン、ゲルなどに含まれる気泡を真空で除去する手法です。
気泡が残ると製品の強度や外観に影響することがあるため、品質向上や不良率低減に役立つとされています。
リークテスト・気密試験
製品や配管の気密性を確認する試験です。圧力計を使った簡易的な試験から、ヘリウムリークディテクタによる精密な試験まで、用途に応じた方法があります。
真空乾燥・凍結乾燥(フリーズドライ)
医薬品、食品の凍結乾燥に使われます。長期保存や品質保持の観点で重要な工程とされています。
業種別に多い用途の傾向
業種によって主に求められる用途には違いがあります。
- 自動車関連工場:樹脂成形のガス抜き、部品吸着、含浸
- 樹脂成形工場:成形ライン全般の真空
- 食品工場:真空包装、真空脱気、冷却
- 化学工場:真空乾燥、含浸、脱泡
- 電子部品工場:成膜、搬送、リークテスト
- 精密機械:真空チャック、組立
- 金属加工:真空炉、含浸
実際の選定は個別のプロセス要求に応じて検討する必要があります。
真空の領域|「低真空・中真空・高真空・超高真空・極高真空」
真空には大きな圧力範囲があり、用途に応じて求められる真空度が異なり、日本産業規格(JIS)では、真空を圧力の範囲によって5段階に区分しています。
なお「粗真空」という呼び方も業界で使われますが、これはJIS上の正式な区分名ではなく、低真空域を指す通称として用いられることが多いです。
JISが定める真空の区分
- 低真空:大気圧未満、100Pa(10²Pa)以上
- 中真空:100Pa未満、0.1Pa(10⁻¹Pa)以上
- 高真空:0.1Pa未満、0.000001Pa(10⁻⁶Pa)以上
- 超高真空:0.000001Pa未満、0.000000001Pa(10⁻⁹Pa)以上
- 極高真空:0.000000001Pa未満
低真空
最も多く使われる領域とされています。
主な用途
- 真空チャック・搬送
- 真空成形
- 真空包装
- 単純な脱泡
- 多くの一般工場用途
主に使われるポンプ
- 油回転式
- ドライ式(クロー、スクリュー)
中真空
主な用途
- 真空乾燥
- 含浸装置
- 一般的な真空炉
- 各種真空プロセス
主に使われるポンプ
- 油回転式(2段式)
- ドライ式(多段ルーツ)
高真空
高真空以上の領域では、低真空用のポンプだけでは到達できないため、複数のポンプを組み合わせて段階的に圧力を下げていくのが一般的です。
主な用途
- 真空蒸着、コーティング
- 高度な真空炉
- 真空乾燥(一部)
主に使われるポンプ
- 油回転式+ターボ分子ポンプ
- メカニカルブースタポンプ
超高真空・極高真空
主な用途
- 半導体製造プロセス
- 表面分析
- 研究用途
主に使われるポンプ
- 複数段のターボ分子ポンプ
- クライオポンプ
- イオンポンプ
本記事では、一般的な工場で多用される低真空・中真空の領域を中心に解説します。
真空ポンプの主な種類
工場で使われる真空ポンプには、大きく分けて油回転式とドライ式があります。それぞれ特徴が大きく異なります。
油回転式真空ポンプ(オイルロータリ)
油回転式は内部に真空ポンプ油を保有し、油によって気密性を高めたり、動きを滑らかに確保しながら気体を排出する方式です。
最も歴史が古く、現在も広く用いられています。
回転する羽根が油の膜によって密閉性を保ちながら気体を押し出す仕組みのため、比較的安定した排気性能が得られます。一方で、使い続けるうちにオイルが変色・減少するため、定期的な交換が必要になる点が特徴です。
メリット
- 長年の実績と信頼性がある
- 初期投資を抑えやすい
- コンパクトで据付が容易
- 比較的高い真空度を実現しやすい
- 安定した排気性能
- 多用途で幅広く使える
デメリット
- オイル交換が必要(数か月〜1年周期程度)
- オイル蒸気の逆拡散(バックストリーム)が起きる場合がある
- 排気からオイルミストが発生し、オイルミストフィルターが必要になることが多い
- 水分・溶剤を吸入するとオイルの劣化が早まりやすい
- 廃油の産業廃棄物処分が必要
- 食品・医薬品・電子部品では不向きとされるケースが多い
主な用途
- チャッキング、含浸装置
- 真空炉、リークシステム
- レーザー、コーティング
- 化学、医療
- セントラル真空
ドライ真空ポンプ|近年普及が進んでいる方式
油を使わず、回転部品が非接触または特殊コーティングで空気を排出する方式です。クリーンな環境が求められる分野を中心に、導入が進んでいます。
クロー式(爪式)ドライポンプ
かぎ爪型のローター2本を、隙間を保って噛み合わせる方式です。
- 構造がシンプルで、メンテナンスがしやすい
- 中流量に対応
- 排気経路が短く、粉塵に強いとされる
スクリュー式ドライポンプ
雄雌のスクリューロータを噛み合わせる方式です。コンプレッサのスクリュー式と似た構造で、連続運転に強いとされています。
- 大流量対応
- 高い排気性能
- 連続運転に強い
- 安定した真空度
多段ルーツ式ドライポンプ
複数段のルーツロータで段階的に圧縮する方式です。
- 高真空対応
- 半導体製造プロセスで広く採用されているとされる
- 構造はやや複雑
スクロール式ドライポンプ
固定スクロールと旋回スクロールで圧縮する方式です。窒素ガス精製装置の膜分離式とは異なる仕組みですが、渦巻状の部品を使う点で似た発想を持つ方式です。
- 小〜中流量向け
- 低騒音・低振動
- クリーンな真空が得られる
- 研究室・小規模用途で使われることが多い
ダイヤフラム式
ダイヤフラム(膜)の往復運動と逆止弁の組み合わせで気体を排気する方式です。摺動部分が少なく、完全にオイルフリーな構造にしやすいとされています。
- 小流量、コンパクト
- 完全オイルフリー
- 化学的に安定
- 実験室や小型機器での利用が中心
ドライポンプ共通のメリット
油を使わないため、オイル交換が不要で、排気に油煙が含まれません。オイルの逆拡散によるプロセス汚染リスクもないとされ、特に食品・医薬品・電子部品といったクリーン要求の高い分野に適しています。
さらに長期的に見ると、オイル代や廃油処理にかかるコストがかからない分、ランニングコストを抑えやすいというメリットも挙げられます。
ドライポンプ共通のデメリット
初期投資が油回転式より高くなりやすいのがデメリットの一つです。また、機種によっては運転時の熱や音が大きくなることがあり、防音・冷却の対策が必要になる場合もあります。
加えて、水蒸気や粉塵を多く含むプロセスでは、機種によって不向きな場合があり、トラップやフィルターの設置などの前処理を要するケースもあります。
比較表
| 項目 | 油回転式 | ドライ式 |
|---|---|---|
| 初期投資 | 安い | 高い |
| ランニングコスト | 高め(油・廃油処理) | 低め |
| 排気のクリーン度 | △ | ◎ |
| メンテナンス | 中(オイル交換等) | 低 |
| 食品・医薬品対応 | △ | ◎ |
| 半導体・電子部品 | × | ◎ |
| 高真空対応 | ◎(補助ポンプ併用) | ◎ |
| 長期コスト | 高め | 低め |
油回転式とドライ式のどちらを選ぶかは、初期費用だけでなく、年間のランニングコストや、ポンプ停止による生産への影響も含めた総合的なコスト(TCO)で比較することが大切です。
補助ポンプ(高真空用)
高真空が必要な場合、上記の主ポンプに、以下のような補助ポンプを組み合わせて使用します。
高真空・超高真空の領域は、気体分子がほとんど衝突せず飛び交う「分子流」という状態になり、大気圧付近で使うポンプとは異なる原理のポンプが必要になるためです。
- メカニカルブースタポンプ(ルーツポンプ):主ポンプの排気速度を上げる
- ターボ分子ポンプ:高速回転する羽根車で気体分子を弾き飛ばすようにして排気し、高真空・超高真空対応
- 油拡散ポンプ:歴史のある高真空ポンプ
- クライオポンプ:気体を冷却して凝結させ、捕集する方式
真空配管|「漏れない」設計と施工
真空配管は、加圧配管とは設計思想が異なります。「外から内へ漏れ込ませない」ことが重要なポイントです。
真空配管の基本要件
- 気密性
- 適切な配管材料
- 適切な配管径
- 適切な配管経路
- 振動・温度対策
気密性
わずかな漏れも到達真空度の悪化につながりやすいとされています。継手、フランジ、溶接部など、全体にわたって高い気密性が求められます。
適切な配管材料
- ステンレス鋼管:耐食性、強度、清浄性に優れ、最も広く使われています
- 真空用ホース:可動部、振動部に使用
- アルミ合金:軽量で、半導体プロセスなどで使用
- 特殊樹脂:化学的な耐性が必要な場合に使用
適切な配管径
真空ポンプの排気能力に合わせた管径を選ぶ必要があります。配管が細すぎると排気の抵抗が大きくなり、到達真空度が悪化しやすくなります。
また、長い距離を引く場合は、太めの配管にすることが基本とされています。
適切な配管経路
できるだけ短く、直線的な経路にすることが望ましいとされています。
曲がりを少なくし、レデューサ(径の異なる配管をつなぐ部品)や異径接続部を最小限にすることで、排気の抵抗を抑えやすくなります。
凝縮水が発生する場合は、排水勾配も検討が必要です。
振動・温度対策
フレキシブル継手による振動の絶縁、温度変化に対応できる可動継手の使用なども、配管の長寿命化に役立つとされています。
リーク(漏れ)対策|「気づきにくいが、性能を大きく左右」
真空システムで特に注意が必要な課題が、リーク(漏れ)です。「真空度が落ちてきた」という症状が出たら、まず疑うべき原因の一つがリークとされています。
リークの種類
外部リーク
配管・接続部・装置壁から、外部の大気が真空内に侵入する漏れです。
内部リーク
弁・シール部の劣化により、別の系統から気体が侵入する漏れです。
仮想リーク
配管内の閉じ込め空間(盲穴、突き合わせ部の隙間など)からガスが放出される現象です。
ガス放出(アウトガス)
配管・チャンバーの内面に付着していた気体や水分が、真空中に放出される現象です。
リークの主な発生箇所
- 配管の継手・フランジ部
- バルブのシール部
- チャンバーの扉やシール部
- 計装・センサーの貫通部
- 配線の貫通部
- マンホール・点検口
- 古い配管の腐食穴
- 溶接部のピンホール
リーク検出方法
圧力上昇法(圧力立上り試験)
ポンプを止めて、一定時間あたりの圧力上昇を測定する方法です。比較的簡単に実施できる方法とされています。
加圧検査法(水浸法、石鹸水法)
配管に加圧し、漏れ箇所から発生する気泡を観察する方法です。比較的粗い漏れの特定に有効とされています。
ヘリウムリークディテクタ
微量のヘリウムガスを使い、検出器で漏れを定量的に測定するという精密な検出方法です。半導体、医薬品、精密装置の検査で広く使われています。
超音波リーク検出器
漏れの際に発生する超音波を検出する方法です。比較的大きな漏れの検出に向いているとされています。
真空計の挙動分析
到達真空度の悪化や、真空に到達するまでの時間の変化から、リークの傾向を推測する方法です。
真空ポンプの主な不具合・劣化症状
定期点検で確認すべき主な症状を整理しておきます。
性能低下
- 到達真空度の悪化:以前より真空が引けない
- 排気速度の低下:真空に達するまでの時間が長くなる
- 異常な真空度の変動
機械系
- 異音・振動:軸受、ロータの劣化が考えられます
- 過熱:冷却不良、潤滑不良が考えられます
- 始動不良
油回転式特有
- オイル劣化:色の変化(褐色化、白濁)
- オイル量の減少:オイルの飛散
- オイル乳化:水分の混入
- 排気からの油煙増加
ドライ式特有
- ローター摺動部の劣化
- コーティングの摩耗
- 粉塵の堆積
配管・バルブ系
- エアリーク:到達真空度の悪化につながる
- バルブの動作不良
- 接続部の漏れ音
安全装置
- 緊急停止装置
- オイルレベルセンサー
- 圧力スイッチ
これらの不具合を早期に発見することが、突発的な故障の防止と性能維持の鍵になると考えられます。
油回転式からドライ式への転換|広がりつつある潮流
近年、特に食品・医薬品・電子部品・樹脂成形・化学などの分野で、油回転式からドライ式への転換が進んでいるといわれています。
転換のメリット
- ランニングコストの削減
- メンテナンス工数の削減
- プロセスの清浄化
- 作業環境の改善
- 廃油処理コストの削減
- 環境負荷の低減
ランニングコストの削減
オイル代、廃油処分費、フィルター交換費が削減できる可能性があります。初期費用は油回転式に比べると高めですが、長期的に見るとコストを抑えることが期待できます。
メンテナンス工数の削減
オイル交換の作業が不要になることで、コスト削減だけではなく、点検・保守にかかる時間と手間を減らすことも可能です。
プロセスの清浄化
オイルの逆拡散や排気の油煙がなくなることで、製品の汚染リスクを下げやすくなり、歩留まりの向上につながる場合があります。
作業環境の改善
オイル蒸気の不快感、油煙による汚れ、油こぼれによる転倒リスクなどの解消にもつながります。
廃油処理コストの削減
廃油は産業廃棄物として処理する必要があるため、ドライ式に転換することで処理費や管理コストを削減できます。
環境負荷の低減
オイルの使用量・廃油量が減ることで、環境負荷の低減につながる可能性があり、ISO 14001などの環境マネジメントの取り組みにも関連します。
転換時の検討事項
プロセス要求との適合
現在のプロセスが求める真空度・流量を確認したうえで、ドライ式の到達真空度・排気速度がそれを満たせるかを検討する必要があります。
投資回収期間の試算
初期投資の回収期間については、現状のオイル代・廃油処理費・メンテナンス工数などを踏まえて個別に試算することが重要です。
具体的な回収年数は、使用状況やオイル単価、メンテナンス頻度によって差が大きいため、一律の年数を示すことは難しいですが、長期的に見るとランニングコストの差で初期投資の一部を回収できるケースがあるとされています。
設置条件の確認
設置スペースや騒音対策の検討も併せて必要です。補助金の活用が可能な場合もあります。
真空ポンプの保守・メンテナンス
真空ポンプの安定稼働には、計画的な保守が重要です。
日常点検
- 真空度の確認
- 異音・振動の確認
- 漏れ音や油漏れの確認
- 温度の確認
月次・四半期点検
- オイル量・オイル色の確認(油回転式)
- フィルターの点検・清掃
- 配管接続部の漏れ確認
- 弁類の動作確認
年次定期保守
- オイル交換(油回転式、数か月〜1年周期程度)
- フィルター類の交換
- 安全弁・圧力計の点検
- 制御系の点検
- 性能測定
オーバーホール周期
オーバーホールの周期は機種・使用条件によって幅があり、メーカーの推奨スケジュールを確認することが基本です。一般的な目安として、以下のような周期で実施されることが多いといわれています。
油回転式
- 中間整備:1〜2年程度
- 本格オーバーホール:3〜5年程度
ドライ式(クロー、スクリュー)
- 中間整備:1〜2年程度
- 本格オーバーホール:3〜7年程度(機種・条件による)
オーバーホールの内容
- 分解・洗浄
- ベアリングの交換
- メカニカルシールの交換
- ロータの摩耗測定と必要に応じた研磨
- ガスケット・Oリングの交換
- 性能試験
廃油処理(油回転式)
オイル交換時に出る廃油は、産業廃棄物として適正な処理が必要です。
工場の真空設備は、成形・搬送・包装・熱処理など幅広い工程を支えていますが、真空は目に見えないため、性能の低下やわずかなリークが、原因の分かりにくい品質トラブルや歩留まりの低下として表れることがあります。
計画的なオーバーホール、配管を含めたリーク対策、油回転式からドライ式への転換は、生産品質の安定と保全コストの抑制、クリーン化を同時に進められる重要な取り組みといえるでしょう。
「到達真空度が落ちてきた」「リークの調査をしてほしい」「油回転式からドライ式に転換したい」「定期オーバーホールを依頼したい」など、どんな段階のご相談でも承っております。
愛知・三重・岐阜の工場で、真空ポンプ・真空配管のことでお困りごとがありましたら、ぜひお問い合わせください。現地調査とお見積りは無料です。緊急対応、メーカー横断対応、リーク試験・性能測定、ドライ式への転換提案、補助金活用、長期メンテナンスまで、専門知識と現場経験を持つスタッフが、御社の生産安定と設備の信頼性を支える最適なご提案をいたします。